副会長の受難の日 2

「き、桐生…これは一体…」
優等生の見本みたいな男が平然とした面持ちでタバコをふかしている。俺は、目の前の光景が信じられなくて何故か隣にいる氷尾の方を詰問してしまう。
「…氷尾、お前が桐生を脅してタバコを無理やり吸わせているのかっ!?」
相変わらず俺を無視する氷尾に変わって桐生が答えた。
「武田君。このタバコはすべて僕の持ち物です。氷尾君にあげたのも僕の意思です。別に氷尾君に脅されてなどというようなことなどありません。大体、冷静に考えてそういうことをして何のメリットがあるわけですか?」
冷静に考えれば桐生の言う通りだ。だが、その時の俺はとにかく混乱していた。それはここにくる直前に保健室であった出来事も充分尾を引いているのだが…

「この事を報告する気ですか?」今度は桐生が俺に訊ねる。
「当たり前だっ、高校生の喫煙などけしからん事だ!」
憤る俺にしかし桐生が淡々と答える。
「いいでしょう、報告して下さい。”屋上で3年1組の桐生が喫煙していました。常時タバコを持ち歩いていた”とでも。
でも、実際それを信じる先生方が一体どのくらいいるでしょうね?これでも僕は1年の時から先生方の厚い信頼を得ています。
僕が一言”そんな事実などありません”と言ってしまえば、先生方はそのまま不問に処すでしょう。
それとも氷尾君になすりつける?でも、君のような実直な方が事実を捻じ曲げて報告することなど我慢ならないでしょう?」
桐生の逆切れのような発言に俺は返す言葉もなく黙り込む。
俺の無言を承諾と受け止めたのか、桐生はポンと俺の肩に手を置いた。
「それでは、内密にしてくれたお礼にいいのを見せてあげましょう…」
そして桐生は氷尾の耳元に何か囁いている。氷尾は一瞬驚いたような顔をするが、すぐにふてぶてしいいつもの表情に戻り言った。
「…わかったよ、やろうぜ。しかし、お前も随分とイカレているなぁ」
「君にだけは言われたくありませんね、氷尾君」
「まぁ、こういう刺激もたまには必要だよな」
俺は二人のやり取りがまったく理解できずボケッと突っ立ったままでいた。二人は同時に俺を見て自分達の制服のネクタイをはずした。それを手にして二人が俺に近づいて…

「な、何をするんだ!外せっ!」
俺の右手と左手は、桐生と氷尾のネクタイによって屋上の柵に括り付けられてしまった。
「安心しな。別にあんたに何かするわけじゃないから」
「氷尾君の言う通りです。あなたにはこれから僕達がすることをただ見てもらうだけです」
憎らしいほどの涼しい顔で二人が俺に言う。
「だったらなんでこんな風に俺は磔みたいな格好させられているんだっ!?」
叫ぶ俺に氷尾が言う。
「お前が怖気づいて逃げないように。逃げられたらこっちのお楽しみが無くなるかな」
一体何をさせられるのか…ついさっきの保健室での悪夢を思い出して俺は柄にも無く怯えてしまう。そんな俺なんてお構いなく、氷尾と桐生が向かい合い…顔を近づけ…キ、キスした…!?
「な、ななな何やってんだお前達っ!」
俺の叫びなんて耳に入っていないように二人はいつのまにか抱き合ってキスし続けている。その内に氷尾の右手が器用に、桐生の制服のシャツのボタン、そしてベルトを外しにかかる。
下着ごとすり落ろされた桐生の下半身。またもや俺は保健室での事がフラッシュバックする。
「やめろっ!氷尾っ!そんなこと桐生が嫌がるだろ!」
自分がされて嫌なことを人がされるのは見てはいられず俺は叫んだ…が…
「武田君…少しうるさいです。気が散ります」
桐生が不機嫌そうに俺を見る。その不機嫌そうな桐生をみた氷尾が、ポケットからハンカチを取り出して俺の口に猿轡した。
「うぐぐっ…!!!」
何なんだ一体?俺はなんでこんな目に合わなきゃならないんだ!?
俺の叫び声が聞こえなくなって、桐生は機嫌を直したらしい。その、剥き出しになった尻の間に氷尾の指が入り込み、指はクチュクチュと桐生の尻の中を掻き回している…
桐生の顔がだんだん火照ったようになって、息も少し乱れてきている。何でだ?さっきの酒井といい、どうしてこいつらは尻の穴いじられて喜べるんだ!?俺にはまったく理解できない!!

「武田、お前童貞だろ?」不意に氷尾が俺に話し掛ける。
痛いところを突かれとりあえず氷尾を睨み付けた俺だったが、柵に磔にされ猿轡された状態では全然迫力が無い…
「とりあえず、今後のためにもじっくり見とけよ。ナマのSEXを。ただし、男同士だけどな」
そう言って、氷尾はいつのまか取り出した己のブツを桐生の尻に押し当てる。わざと俺に見えるような角度で。そんなもの見たくない!と俺は目をつぶっては見たものの、桐生の甘い声に、思わず好奇心が勝ってしまって…
恐る恐る目を開くと、いつのまにか桐生は俺の目の前で大股広げて喘いでいる。普段の奴の優等生ぶりから誰がこんな姿を想像するだろう…シャツもはだけてほとんど全裸に近い格好で、その中心では桐生のチ●ポがそそり立ってて…

衝撃的な行為を見せ付けられながら、俺はあろうことか桐生の姿と由良を重ね合わせていた。
桐生と同じくらい由良の肌も白い…きっとあいつも制服を脱いだらこんな感じなんだろうな…そして、そんな桐生を抱えあげるように激しく突きまくる氷尾の姿に自分を重ねて…
い、いかんっ!俺は一体何を考えてしまったのだ!こんなこと由良に対して失礼すぎる!
うっかり浮かんだヨコシマな想像を打ち消すように俺は激しく首を振って煩悩を打ち消そうとしたのだが…
「うぅ…」下半身が…やばい…膨らんできている…俺のチ●ポ…

俺が苦悩している間にも目の前の二人はすっかり自分達の世界に入り込んでお楽しみ中だ。
程なく氷尾が小さく顔をしかめ、桐生の中から己のブツを抜く、桐生の悩ましい声とともにほぼ二人同時にフィニッシュを迎えたようだった…
相変わらず俺を無視したまま二人は自分達の余韻に浸りきっている。
「見られていると、随分興奮するんだな、お前って…」
氷尾が桐生のシャツをその肩にかけながらからかうように言っている。
「まぁ、後半はそんなこともどうでも良くなりましたがね。でも、久々に刺激的なSEXでした」
肩にかけられたシャツに腕を通し、ハンカチで身体を拭きながら桐生が答えている。さっきまでの乱れようが嘘のようにもういつもの優等生の姿に戻っている。
何事もなかったように身なりを整えた二人は、ようやく思い出したように俺の方に向かってきて、俺の両手を括っていたそれぞれのネクタイを外しにかかる。
ようやく自由になった俺はすぐさま猿轡を自分で外し、そのハンカチを氷尾に返そうとしたが「いらん。お前にやる」と突っぱねられてしまった。俺だってこんなものいらないぞ!
「それより、お前も随分楽しんでいたんじゃないか」目ざとい氷尾は俺の膨らんだ股間をニヤニヤしながら見ている。「俺が、楽にしてやろうか?」
「じ、冗談じゃない!誰がお前達になんか!」
慌てて俺は股間を抑えながら、そそくさとその場を後にした。もうこれ以上あいつらには関りあいたくない。
それに、この膨らみの原因はあいつらじゃなくて…俺の妄想の結果で…ってまた由良のことを思い出したら突っ張ってきた…

とりあえずトイレで一発抜いてすっきりしよう。
情けないが、こんな状態で生徒会室に戻るわけにもいかない。
膨らんだ股間を悟られないように俺はなるべく人の居ない廊下を選んでトイレに向かった…のだが…
「あーっ、いたいた!副会長!今までどこ行ってたんすか〜」
樹原の声が後ろから響いてきた…


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