発熱

…気持ち悪い…
昨日の晩から急に熱が出て、一気に9度近くまで上昇。
めったに風邪なんてひかない俺にしては珍しい事態…なんて呑気なこと言ってる場合じゃない。
会社は今日だけ休めばあとは土日、なんとか病院行って薬ももらったし、来週には復帰できるだろう…
それにしても、辛い。身体を動かすのも億劫だから病院から戻ってからはベッドから動けない。
熱の他にヒドイのが腹具合。今朝は全部吐いちまったもんな…薬飲まなきゃいけないからさっきは少しだけ食べたけど…やっぱりなんかゴロゴロしやがる…

こういう時に一人暮らしってのは辛いもんだ。誰も俺を介抱してくれないもんな…と、ちょっと寂しくなって俺は八重樫にメールした。
ほら、やっぱりこういう時って恋人が面倒見てくれるってもんだろ?
で、来た返事は…「今日は残業だから遅くなるけどいいか?」…そうだよなアイツの会社も忙しいもんなぁ
疲れてんのに悪いなぁ…と思いつつ俺は「それでも来てくれ」ってメール返信。
アイツの残業って大体いつも8時くらいまでだから、俺んとこ来てくれんのは多分9時くらいかな…
はぁ…と溜息ついて俺はとりあえず眠ることにした。

目が醒めたら時計は7時を廻っていた。なんか小腹減ったような気がしたけどベッドから動く気力もないし、今喰ったらマジで下りそうだし…まったくなんで空腹だけはどんな体調でも平等に訪れるんだよ…なんて俺は一人ごちた。
とりあえず、ヨーグルトかなんかを八重樫に頼もうと俺は枕元のケータイを手に取った。
その時、なんか一発屁がしたくなった俺はちょっといきんで屁をこいた…そう、そこまではよかったんだ…
ブッとガスを出したとたんに何か尻から余計なものまで出て来た感触…ヌルッとした液体が俺の尻周りにジワリと広がってく…ま、まさか…
もの凄く嫌な予感に苛まれながら俺はそうっと、下着の中に手を入れて確かめてみた……
…やっちまった…
指先にちょっとついてる黄色いものは紛れも無い俺の……ちびったクソ…
間もなくイヤ〜な臭いが俺の鼻をつく。
ありえねぇ…いい年してクソちびっちまったのかよ俺…あまりの情けなさに涙が出そうだ。
とりあえず身体洗って着替えなきゃ…
あぁでも身体動けねぇ…でも早くしないと八重樫がやって来るし…
あと2時間のうちにこの大変恥ずかしい状態をなんとか隠蔽せねば…
がんばれ俺!なんとかギリギリの力を振り絞ってベッドから身体を起こした…さぁそして立ち上がって風呂場に行くんだ!自分に気合を入れなおそうとしたその時…
玄関の鍵を開ける音…この部屋の合鍵持ってんのは八重樫しかいない。
おい…なんでこんな早く来るんだよ…
頭ん中が軽くパニクってるうちに、八重樫が部屋に上がってきた。
「モッちゃん、具合どう?大丈夫か?」
全然大丈夫じゃない…とにかく俺は慌ててやっと起き上がったベッドに再び身を沈めた。

「メール貰ってさ、俺大急ぎで仕事片付けたんだ、それでもこんな時間になっちゃったけど」
本来ならこんな八重樫に心から感謝するんだけど…今だけは…もっと遅くでよかったのに…なんて勝手なこと思ってしまう。もっとも呼び出したのは俺なんだけど。
「とりあえずさ、腹も調子悪いっていうから、ヨーグルト買ってきたけど喰える?」
さすがだ八重樫。俺の心を読んでくれたかのようなグッジョブ!
でも、とりあえず今はそれよりも俺のこの醜態をどう誤魔化すかが先決だ。
「…もうちょっとしたら喰うよ…薬も飲まなきゃなんねぇしさ」
俺はもう冷や汗タラタラ。何か熱も一気に下がってしまう勢いだ。
「モッちゃん、凄い汗だな…熱は下がったのか?」
とんでもない誤解をした八重樫が俺の額に手を当て顔を近づけてくる。やばい!あんまり近づくな、臭いがバレル!
ん…?と八重樫が一瞬妙な表情をし、鼻をクンクンさせた…あぁもうダメだ…バレタ…絶対バレタ…
「…もう大丈夫だよヤエ…」
どうしていいかもう判らず、俺はとりあえず額に乗せられた八重樫の手をどけようと、奴の手首を掴んだ。
そして激しく後悔。俺の指には…クソがついたまんまだった!
八重樫の顔が一瞬強張ったのが判る…
あぁ…もうダメだ…
恥ずかしいっていうか、情けないっていうか…
「ハハ…チビッちまってよ…」
もういっそ大笑いしてくれ、その方がまだマシだと思い俺は自虐的に告白をした。
しかし俺の決死(?)の告白に八重樫は何の反応も見せず黙って俺の傍から離れ洗面所の方に向かって行った。
何だよ…奴の手首掴んだ時に俺のクソでもついてしまったのか?
で、八重樫はムッとして手を洗いに行ったのか?
このままアイツ怒って帰ってしまうかも…
病気で気まで弱くなってしまってたのか俺は何だか悲しくなって目がちょっと潤んできた。

布団の中で一人落ち込んでいると
「モッちゃん、熱は下がってるみたいだから、シャワー浴びたらどうだ?汗も流して少しスッキリしろよ」
そう言いながら八重樫が俺のところに戻ってきた。
洗い流したいのは汗よりも寧ろ、ケツについたクソの方だが、もうそんなことも口にする気も失せて俺は黙って頷いてベッドから起き上がった。
すかさず八重樫が俺の身体を支えてくれて、腰の辺りにバスタオルを巻いてくれた。
そのまま何も言わず、俺達は黙ってバスルームに向かった。

「じゃ脱いだ服はそこらへんに置いておいて、俺、着替え持って来て置いておくから」
そう言って八重樫は俺をバスルームに残し出て行った。
腰に巻いたバスタオルを取り、ゆっくりとパジャマのズボン、そしてトランクスを下ろす。
案の定、そこにはチビッた俺の柔らかいクソがビッチャリ。
幸いパジャマの方にまでは被害は及んではいなかったので俺はそそくさとクソまみれのトランクスをビニール袋に入れて脱衣所の隅に放り投げ、シャワーを浴びた。

シャワーを浴びスッキリしてバスルームを出ると、気分も身体も調子が良くなってきた気がした。
ベッドには戻らず、俺はさっき買って来てもらったヨーグルトを手にTVを見てる八重樫の横に座った。
「モッちゃん、調子大分よくなった?」
心配そうな顔で八重樫が俺の顔を覗き込む。
「かなり良くなったみたいだ…その…ありがとな…ヤエ」
俺の醜態についてあえて何も触れずにいてくれた八重樫の心遣いが嬉しくて俺はそっと奴の頬にキスをし、シャツのボタンを外しにかかる。
「モッちゃん、まだ本調子じゃないだろ…」
ためらいがちな八重樫に構わず俺は奴を脱がしていく。あ、しまった…ローション手元にない…今更ながらに気が付いたがここで中断するのも気が削がれる。
仕方なく俺は食べかけのヨーグルトを指に取り八重樫の後の孔に塗りこみ潤滑油代わりにした。
何だかんだ言って八重樫も気分が盛り上がってきたようで息が段々荒くなってきてる。
「モッちゃん…はや…く…」
強請る八重樫に答えるために俺はすっかりそそり勃った俺のブツを八重樫の中に挿入。
八重樫のソコはキュッと俺をいい感じに締め付ける、俺の身体が火照ってきたけど、熱がぶり返したわけじゃない。八重樫への思いで身体が熱くなってきてるんだよな…
ゆっくりと俺は抽送を始める。俺が腰を動かす度に八重樫の声が段々大きくなってくる。
「は…んっ…モッ…ん…いいよ…」喘ぐ八重樫の吐息が俺の耳にかかると何だかゾクゾクする。
八重樫は別に女っぽい顔立ちとかヤワな感じの男じゃない。実際、一緒に釣りに行ったり、飲んだりしてる時はこんなこと思わない。なのに、こうやってヤってる時の八重樫はホントに色っぽい。表情も、声も、絡みつく手足も、そして熱いアソコも、何もかもが艶やかで俺をそそるんだ。
八重樫の中で体積を増してくる俺のブツを、奴は程よい締め付けで包み込んでくれる。
そっと、奴のブツをなぞるように触れてやるとそれだけで八重樫はビクンと反応し、さらに俺を締め付ける。
「モッち…すごく…い…ぃ…俺…イキ…そ…」
掠れてちょっとハスキーな声で俺の耳元に囁く八重樫。計算してないとこがある意味コワイよ…
「じゃ…俺も出しちゃってイイ?」
八重樫の囁きに答えるように俺も奴の耳元で囁くと、奴は黙って頷き俺の肩にギュッと抱きつく。
そろそろ俺の方も限界に近付いてきてる。フィニッシュに向かって俺は八重樫の耳の後に舌を這わす。
「あぅ…っ」ビクンと八重樫が反応する。そう、ここが奴の弱点、性感帯だ。それだけで八重樫は一気にイッた。
イク時の陶酔した八重樫の顔、今迄以上に最高に色っぽいその表情で俺のブツも奴の中で大放出だ…

「…ごめん…調子こいて中出ししちまった…」
理性が効かなくなった理由を病気の所為にして俺は八重樫に謝ったが、奴は別段気にせずにシャワーだけ浴びさせてくれと、浴室に向かった。
ひと息ついて俺は八重樫が上がってくるまで、情事の後始末。さっきまでの身体の具合の悪さがウソのように消えてる。
あの、恥ずかしいクソをチビッたことですらもうどうでもいいような気分。
暫らくしてシャワーを浴び終わった八重樫と他愛のない話をしてると結構な時間になってしまった。
「モッちゃん、俺とりあえず帰るわ。今夜はゆっくり休めよ」
どうせなら泊まってけよと言ったんだけど、体力回復が優先だよと、八重樫に言われてしまい仕方なく同意。
「じゃ、明日改めて来るから」
そう言って八重樫は帰って行った。

あ、そうだ…
八重樫が帰った後、俺はようやくチビッたクソが付いたトランクスの事を思い出した。
さっさと洗ってしまおうと、それを包んだビニール袋を探したんだが…
「何で…無い?」
あの時確かに脱衣所の隅に放り投げたはずだ。なのにそれが何処にも無い。
八重樫がゴミと間違えて捨てたのかとゴミ箱覗いたけど無い。
まさか気を利かせて洗ってくれたのかと、洗濯機周りを探したが無い。
「何のミステリーだよ…」
ミステリーにしたって消えたものがクソついたトランクスなんて洒落にもならんだろうが…
と、その時俺は名探偵のようにある結論が閃いた。
「ヤエ…」
多分アイツがシャワー浴びに行った時、あれを見つけてそのまま持ってったに違いない。
俺が泊まってけって言ったのにそれを拒んだのは多分…
「あの野郎…あんなモンをオカズにすんなよ…」
俺は大きな溜息を思わず吐きだした。

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