渋滞

久々の連休。
今日は泊りがけで遠出だ。
俺と八重樫だけのとっておきの場所で釣り三昧…の予定だったんだが…

「…何でこんなに渋滞してんだよ」
ハンドルを握りながら俺はイライラして舌打ちした。
この場所には八重樫とちょくちょくやって来るが、元々観光地でも何でもない場所だから
いつもなら車飛ばせばすぐに到着なのに。
「もう1時間くらいほとんど動いてねぇよな…」
のんびり屋の八重樫も流石にこの渋滞にはうんざりしているようだ。

「連休だからなんかイベントでもあんのかな」
「今迄こんなに人来るようなイベントなんてあったかよこの辺」
「ちょっとまってろ」
八重樫が携帯を取り出して何か調べている。暫らくして「あちゃ〜」と大袈裟に天を仰ぐポーズ。
「何かわかったのかよ、ヤエ」
俺の問いかけに八重樫がこの渋滞の原因を教えてくれた。
「ドラマのロケ。しかも来るのがあの…」
八重樫が口にしたのは、芸能人に疎い俺でも知ってる有名俳優。
「ったく、こんな日にロケなんかするなっての」
自分でも八つ当たりに近いと思うグチを呟き、仕方なく俺たちは渋滞の中に身を任せた。

僅かずつだが車は進んでいる。時間はもうどのくらい経ったのか判らない。
だが、俺の身にはちょっと緊迫した事態が迫っていた。
「…マズイ…小便してぇ…」
いつもならとっくに到着して2〜3匹は釣ってるであろう程の時間をただひたすら車の中で過ごしているわけで、
しかも、山道に突入してしまってコンビニはおろか、簡易トイレすら見当たらない。
「じゃ、その辺で立ちションすればいいだろ」
「この状態で、俺が車降りちまったらどうなるんだよ。路肩もないこの狭い道で車停めて立ちションなんかしたら後の奴等に袋叩きだ」
八重樫の呑気な返しに俺は半ばキレ気味に言ってやった。
「大体、ヤエがいつまでたっても免許取らないから」
免許取る金がない…八重樫はいつもそう言うけど、こいつ給料のほとんどをルアーやらロッドにつぎ込んでるだけなんだよな。
少しはその金を免許に回せ。車を持てとは言わない。ただ俺だってたまには運転変わってもらいたいんだ。
こういう非常事態の場合なんか特にな。

まぁ強引に車停めちまえば、後ろの奴等は対向車線から追い抜いてくんだろうけど…運が悪いことに対向車線も結構車の流れが止まらない様子。
「…絶対もたねぇ…」
背に腹は変えられない。仕方が無い、アレ使うか…
「ヤエ、悪ぃが、後の俺のバッグからちょっと出してくれ」
「何を?」
「…携帯トイレ…」何か気まずくて俺は小さくその名を呟いた。

「へぇ、これが携帯トイレかぁ、初めて見る」
八重樫は珍しそうにそれを袋から取り出して眺めている。
「出したモンは瞬時にゼリー状に固まって、臭いもない…すげぇなぁ」
「感心するのはいいから早く俺にくれ!」
俺は引ったくるように八重樫からそれを取り上げた。
「運転しながらだと、やりずらいだろ?俺が手伝ってやろうか?モッちゃん」
「うるせぇ!いいか見んなよ!」
ちゃかすような八重樫の言葉を無視して俺は今にも漏れそうな俺のブツを取り出してその中に小便を出した。
ずっと我慢してたから出す時の気持ちよさに俺は一瞬呆けたような気分になる。
すると後からクラクション。前の車が結構進んでいるのに気が付いて慌ててアクセルを踏む。
「うわ〜ホント固まってる。ひっくり返してもモッちゃんの小便こぼれないや」
いつの間に俺からそれを取り上げた八重樫が、袋をひっくり返したり臭いをかいだりしてやがる。
「おい、ヤエっ!んなもんとっととゴミ袋入れろ!」
俺の怒鳴り声に八重樫は慌ててソレをゴミ袋に押し込んだ。

ようやく目的地に着いた俺たちはすっかり日も暮れてしまったので今日の収穫は諦め、明日に賭けることにした。
テントを張って運転の疲れもあった俺はすぐにウトウトと眠ってしまったらしい。
尿意を催し、俺が目を醒ますと、隣りで寝ているはずの八重樫が居ない。
あいつも小便かな…と思いながら俺はテントの外に出た。
予想通り八重樫がしゃがんでいるのが見える。
(何だ、小便じゃなくてクソかよ…)
昼間、切羽詰っていたとは言え、車の中で放尿してしまった俺。「見るな」と言ったのにあのヤローじっと見てやがったもんな…
こうなったらリベンジだ、と、俺は悪戯心が沸いてきて、八重樫の方にそっと近付いた。
八重樫はしゃがんでいたが、クソしてるわけじゃなかった。何か持って、ただしゃがみこんで…って…
それ、昼間の携帯トイレじゃねぇか…俺の…
「ヤエ!てめぇ何やってんだよ!」
俺の怒鳴り声にびっくりしたように八重樫は振り向いた。ちょっと口をモゴモゴさせてるってことは…
まさか…中の…アレ…喰ってる!?
「も、モッちゃん…」
とんでもないとこ見られてか八重樫は半分パニック状態のようだ。
「あ、あの…これはその…つまり…」
「ヤエ…」
「ご、ゴメンなさい…」
ちょっと涙目になりながら俺に謝る八重樫。何だかちょっと可哀相になってきた…

「ヤエ…」
「ゆるして…モッちゃん…」
「んなモン喰うと腹壊すぞ」
ひたすら謝る八重樫に俺は優しく言った。
「お前、俺の小便…そんなに口にしたかったのか?」
戸惑いながらも八重樫は小さく頷いた。
「お前そんな趣味あったんだ…」
「違う!俺は…モッちゃんのだけだよ!モッちゃん以外の奴の小便なんて、吐いちまうって!」
なぁにしょうもないこと力説してんだコイツは…
でも俺も八重樫の隠してた願望ってか性癖に気がつかなかったんだな、恋人同士になって何年も経つのに…

「ホントに俺だけ?」
俺の問いに今度は大きく頷く八重樫。あぁ、もう仕方ねぇなぁ…
「じゃ、さ口開けろよ、ヤエ」
「?」
俺の言葉に不思議がる八重樫。
「俺、丁度小便しようと思って起きたんだよ。そんな身体に良くなさそうなゼリーなんか喰ってないで…」
一呼吸おいて、俺は言った。
「俺が今出す小便飲めよ」

八重樫の目が一瞬点になる。が、しかしすぐにその目は悦びに満ち、俺に言われたとおりに口を大きくあけて座り込んだ。
その口の中に俺は俺のブツを入れる。あまり喉の奥まで入れちまうと、コイツむせちまうな…なんてどうでもいい気遣いをして。
準備が整った俺は、ちょっとイキんだ。すると、尿道を通って俺の小便が流れ出す。はじめはチョロチョロだったが、次第に勢いを増してくる。
クゥ…ゥ…と八重樫は一生懸命俺の小便を飲み続けている。なんて至福の表情してやがんだコイツは…
放尿が終了しても、八重樫のヤツはまだうっとりとした顔で俺の小便の味の余韻に浸ってるようだ…
そんな八重樫の表情に俺は妙にそそられ…

「ヤエ…」
俺の言葉にようやく八重樫は我に返ったように俺を見る。
「…ありがとう…モッちゃん…でも…こんな変態な俺は…愛想尽かした?」
自分の欲望を満たした後、自分の願った事の重大性にようやく気がついたかのように不安な目で八重樫は俺を見ている。
「…確かに変態だよな、でもさ、そんな変態に小便飲ませる俺も充分変態だって、…だからお互い様」
そう言って俺は八重樫の頭を軽く小突いてやった。ホッとしたような表情の八重樫に俺は益々気分が…
「ヤエ…小便の次に飲んでもらいたいものあんだけど…」
俺の言わんとしている事をすぐに理解した八重樫は、
「モッちゃんのものは何でも飲みたい」とニッコリ笑って俺のブツを咥え、舌を這わせた。

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