「なぁ、今度温泉行かないか?」
朝食の席で突然彼が言った。
「温泉?」食後のコーヒーを飲みながら僕は"いきなり何?"と言う顔で彼を見た。
「そう温泉一泊!いいだろ〜たまには。ゆったりのんびりとお湯につかりながら過ごすってのもさ。」
いつになく浮かれる彼に僕は内心ちょっとびっくりしながらも、温泉一泊は魅力的だななんて思ったりする。
「でも、会社の方は大丈夫なの?」
一番の心配事は彼の仕事。大手コンツェルンの会長の甥であり関連会社の若社長でもある彼がそんな時間とれるとはさすがの僕も思ってはいないから、今まで旅行なんて言い出したことなんてなかった。
「それに…やっぱ男二人で温泉って…どうなのかな…」
こんな僕でも一応世間の目ってものも気にしてみたりする。まあ、男同士で同棲しておいて今更なんだろうけどね。
「その辺は大丈夫だ。近場になっちまうけど、個室温泉付きでいいとこがあるんだよ。手筈は俺が整えておくからな。それと仕事のことはお前が心配することないからな」
ここまで言われては行くしかないよね。そんなわけで急遽決まった温泉一泊。
…でも僕はちょっとだけ不安なことあるんだよね…

というわけで温泉一泊旅行の日。
僕が連れてこられたのは何とも見事な高級旅館。
更に予約してある部屋はVIPルームか!?と言うような広い豪華な部屋…
「すご〜…今までこんな部屋見たことないよ…」
物珍しそうに部屋を見回していた僕だったけど、フッと振り返ると、彼が舐めるような視線を僕に向けてるのに気が付いた。
「今夜は…思う存分ゴージャスな気分を満喫させてやるぜ…」
と、彼は僕の唇にそっと舌を入れてきた。蕩けるような甘い、でも激しい彼のキス…
「…んっ…」
僕らはそうして暫らく舌を絡め合っていけど、彼が唇をそっと離し
「…後は夜まで"おあずけ"だよ…」と小さく微笑んだ。僕もそれに答えるようにフッと小さく微笑み返した。

夕食も豪華三昧。堪能させていただきました。
でも彼は食事が済んでもまだビール飲み続けてる。酒豪で底なしの彼はいつもそうやって飲んではいるんだけど、こんな時くらいは二人で思いっきりいちゃつきたいのに…なんて下戸の僕はちょっぴり不満。
仕方ないので僕は軽くシャワーを浴び、暫らく一人でくつろいでいるとようやく彼もこっちにやって来た。
二人で部屋に備え付けの温泉につかる。考えてみると今日僕が温泉につかるのは今が初めてだ。やっぱりシャワーとは全然違うよな〜なんて当たり前の事を思いながら浸かっているといきなり彼が僕に問い掛けて来た。
「お前さ、何で昼間大浴場に一緒に行かなかったの?」
大浴場行ってみないか、という彼の誘いを僕は断った。別に彼と一緒に居たくなかった訳ではない。折角の一泊旅行なんだし…そうは思って今回はって思ってはいたんだけど…やっぱりいけなかった大浴場…そうこれが僕の不安要素だったりする。
もしかして彼はそれで気を悪くしてたのかな…だからずっと一人で飲んでたりしてたのかな…だったらやっぱり誤解解かないとな…
「…あのね…どうも僕はああいう大浴場は苦手で…中学、高校と修学旅行先で風呂に入った時、何故か僕はずっと皆にジロジロ見られ続けて…それ以来どうしてもダメなんだ…」
だからゴメンネ…と僕は彼にペコリと頭を下げて謝った。でも彼は無言のまま微動だにしない…どうしよう本気で怒ってる?
そんな僕の不安は一瞬で打ち消された。
「な、なんて可愛いんだ〜!」彼がいきなり叫んで僕に抱きついてきた。
突然の彼の態度の変化に今度はこっちが硬直しちゃった。
「でもよ、俺その時のお前のクラスメートの気持ち分かるぜ」まだ僕に抱きつきながら彼がしみじみと言った。
「どういう意味?」
「…だから〜、こ〜んな色っぽいお前と一緒に風呂なんて入ったらそりゃもう、目が釘付けにならない方がおかしいって!ああ!俺もその現場にいたかったな〜!…そうだよなぁ〜よくよく考えてみりゃ大浴場なんかで、わけのわからない一般大衆どもにお前の身体を見せるなんて勿体ないよな〜、うんうん…」
「バカ…」
一人納得する彼にこれ以上何を言っても無駄のようなので僕は一言だけポツリと呟いた。

そう言いながら彼の手が僕の中心部分にそっと伸びてきた。
「"おあずけ"の続き始めようぜ…」
彼の言葉に僕はコクリと頷く。
熱い湯の中で感じやすくなっていた僕のそれはすぐに反応しだす…荒い吐息の中僕は彼の唇にそっと自分の舌を入れた。
僕は湯の中で彼の膝の上に抱きかかえるようにに跨らせられ。やがてその指は後ろに伸びてきた。
「…ん…ふぅ…」声が勝手に漏れてくる…僕の気持ちも身体も次第に高潮していく。
パシャ…
湯の中で指を差し込んだまま彼は僕を後ろに向かせた。
「…ん…っ…」僕が身をよじり首を振るたびに湯がパシャパシャと撥ねる。
そんな僕を焦らすかのように彼はなおも指で僕の中を掻き回す。
「ねぇ…はやく…」
風呂の岩場に指を置いて僕は大好きな彼のものが入ってくるのを身悶えしながら待っていた。そんな僕の姿を見て
「ホントにお前って…可愛いよ…」
そう言って彼は指を抜き、僕を愛しむように抱きしめながらそっと自らのそれを押し込んできた。
「…あ…ん…お湯…も…はいって…」
彼のものと一緒にお湯も僕の中に入ってきてそれがなんともいえない刺激を僕の腸に与えてくる。
「この風呂にはオレたちしかいないんだから思う存分出せよ…」
僕の耳元に舌を這わせながら彼は囁きかける。
「…出す…って何を…んっ…」
「それはね…」と彼はグイッと腰を揺らす。すると僕の中に収まっている彼のものが更に奥に深く侵入してくる。
「う…ぅん…はぁ…あぁ…」堪らず僕は声を挙げる。
「まずはお前のその声…もっと出していいんだよ…」
「ひぁっ…っ…っ…」
別に彼の要求に応えてるわけではないけど声が勝手に大きくなってくる。それくらい彼の動きが僕の前立腺を刺激して心地よいんだ…
バシャバシャ…
僕たちの動きに合わせ湯が撥ねる音までも次第に激しくなってきてる…
「もう一つ出していいのは…」
彼が今度は僕の勃ちっぱなしの分身をツッ…と撫でる。強くないその刺激は返って僕を程よく快感へと導いてくれる。
「え…何…あ…んっ…」
激しい後ろからの突きと緩い前からの刺激…時には交互に、時には一緒に…と繰り返し与えられ僕の絶頂はついに頂点へと達した。
「あぁっ……」
僕の中から飛び出した白濁の液体がお湯の中に浮かぶ。
「俺も一杯出しちゃったよ…お前の中にね」
少し疲れたような彼の言葉がぼんやりと僕の耳に届いてきた。

「あぁ、いい湯だった♪」
湯上りとプラスアルファで頬をほてらせようやく彼は風呂からあがってきた。
先にあがった僕はすでに浴衣を身につけてダラリと椅子にもたれ座っていた。
「どうした?…俺のが激しすぎたか?」
そう言って心配しつつも彼の指はちゃっかりとはだけた僕の胸元を触ってる。
「違うよ。ちょっとのぼせただけだよ…」にじり寄る彼の指を抑えながら僕は応戦しようとしたけど何だか腕を動かすのもおっくうだ。
「おい…ホントに大丈夫か?」
そんな僕が流石に心配になったのか、彼は指の動きを止めて僕を覗き込んできた。
「布団で横になった方がいいぞ。さすがに疲れたんだろ?」
大丈夫…と言おうとする間に僕はいきなり彼に抱えあげられた。でもちょっと待って、この体制ってまるで…
「俺一度やってみたかったんだよね、お姫さま抱っこ」
そう言って彼は子供のようにニコニコと僕を見つめてる。普段は滅多に見れないそんな彼の顔を見てると僕も何だか調子に乗ってきちゃいそうだよ。
「それじゃ、僕を抱えてくれるナイト様にご褒美だよ」
と僕は彼の頬に軽くキスをしてあげた。

額に当たる冷たい感触で僕は目を覚ました。
「…んっ…」
目を開けると彼がスポーツドリンクを僕の額に当ててニコリと笑ってる姿が目に入ってきた。
「僕、眠っちゃったんだね」
彼からスポーツドリンクを受け取って、僕はそれを一気に飲む。う〜んすっごく美味しい!
「お前の寝顔もうちょっと見ていても良かったんだけどさ…でもそれじゃやっぱ退屈だし」と、自分はビールを片手に彼が言う…ってまた飲んでたんだこの人は…
「ところでさ…」
呆れ返るように彼を見ている僕に、ふと真面目な顔をして彼が話しだす。
何事かと僕は思わず彼を真面目に見つめ返す。
「…第2ラウンド…大丈夫か?…」
「………」
真面目な顔して言う事はそれ?…もう誰もこの人には敵わないな…と僕はある意味彼を尊敬した。
「……もう少し休んでからね……」
こうなったらこっちもとことん付き合ってやる…開き直った僕はそう答ええてやった。
彼の真面目な顔が一瞬にしてニヤケ顔になったのは言うまでもない…

「ねぇ、せっかくだから観光しながら帰ろうよ」
翌朝僕は携帯で観光ガイドを検索しながら彼におねだりしてみた。折角の温泉旅行、こんなチャンスは滅多にないのに昨日は結局H三昧。何だか普段と変わりないんじゃないかってちょっと僕も反省したんだ。
「…タフだなぁ…でも今日は勘弁してくれ」
僕の提案に溜息混じりに彼は呟いた。
「何でだよ〜」と口を尖らせる僕に彼は小さな声で「俺は疲れてるからな…」とだけ言った。
「へ〜、昨日あんだけしつこかったのに結局僕の方がタフだったってわけかぁ〜やっぱり年には勝てないね」面白がって僕がからかうと彼はムスッとして「飲みすぎたんだよ」なんて下手な言い訳してる。
「もう、素直に認めたら〜」なんてしつこくからかい続ける僕に彼がいきなりとんでもない事を言った。
「今日は仕事だ!観光は無し!」
えぇっ??何それ?休みとったんじゃないの?まさかこれから会社直行…?
混乱する僕を見て彼はしてやったりという顔でニヤリと笑う。
「この旅行は建前上、俺とお前の"出張扱い"だからな。少しぐらい仕事しないとさすがにまずいだろ?」
「はぁ?」…ちょっと待ってつまりこの旅行って"出張"なの…ってことは会社の経費?それはあまりにマズイんじゃないの…
「安心しろ、確かに公私混同かもしれないけど、俺はいつも言ってるだろ?要は何も文句言わせないくらいの形さえ残せばいいんだって。実は大きな契約を今日結ぶことになってるんだ。だから今日一日は真面目に仕事。その代わり明日は思う存分観光だ。お前の有給は明日だけしか使ってないから」
なんだかもう僕はただただ彼の言葉に頷くしかなかった。流石だな…なんだかんだ言って押さえるトコはしっかり押さえてる彼に僕は益々惚れ直しちゃったよ。
それじゃ今日は一日お仕事頑張ろう!

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